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勧誘 そうだ!京都へ行こう!
引っ越し1日前の朝。
ボタボタと窓にへばりつくような
大粒の雨が降っていた。&bsp;貞彦さんは、近場の出張で
私がぷう助を保育園へ預けて
帰宅したときは、まだゆっくり
コーヒーをのんでいた。&bsp;よく行く出張先で、いつもより
出社は遅く、帰宅は早い。&bsp;出張ということは、
明日は普通勤務で
早く帰宅しないはずだから
時間に余裕をもって
引っ越しができる。&bsp;当日、出張の日と重なっても
大丈夫な時間に引っ越しの予約を
したけど、1時間でも
余裕があるほうがいい。&bsp;貞彦さんを見ることができず
なんとなく、うろうろ
リビングで掃除しているふりを
していると
家の電話が鳴った。&bsp;&bsp;「はい、●●です」&bsp;(もしもし、本日のエアコンの
取り外しですが、お昼過ぎに
伺ってよろしいでしょうか)&bsp;「…はい?」&bsp;(明日●●引越しさんで引っ越し
ですよね。エアコンの
とりはずですけど)&bsp;&bsp;いっきに唇から、呼吸、肩が
震える。&bsp;引っ越しの見積もり時に
エアコンは、前日に
電気屋さんが取り外し
当日、運ぶことになるという
ことで、バレるから
もっていかないことに
なっているのに。&bsp;家の電話も住所も
誰もアクセスしないよう
厳重に保管すると
いっていたはず。&bsp;おそろしい手違いがおこっている
ということだけは、すぐ
理解できたけど
真後ろに貞彦さんがいる。&bsp;&bsp;「うちは大丈夫です。結構です」&bsp;&bsp;とっさに勧誘の電話が
来たふりをして受話器を戻す。&bsp;頭は状況を把握できた
つもりになっていても、
体全身がパニックになった。
普通に歩くってどういうことなのか
分からなくなってしまい、
震えを力で押さえつけ
ながら、カタカタ歩き
目的もないまま
キッチンへいく。&bsp;意味もなくスポンジを
手に取り、何もない
シンクの側面をこする。&bsp;炊飯器の時刻をみた。
あと6分すれば
時間に正確な貞彦さんが
家をでる。少したってもう一度
炊飯器をみたけど
まだ6分。&bsp;時間の流れが
とまったのかと真剣に
疑いたくなるほどに長い。&bsp;&bsp;「誰からですか」&bsp;「ん…?勧誘」&bsp;「そうですか」&bsp;&bsp;そういうと貞彦さんが、時間より
早く席をたつ。&bsp;一瞬、神様に感謝した。でも貞彦さんは
リビングをでないで
電話の前にたち
ボタンを押した。&bsp;&bsp;『はい、●●です、
もしもし、本日のエアコンの
取り外しですが、お昼過ぎに
伺ってよろしいでしょうか、
…はい?、
明日●●引越しさんで引っ越し
ですよね。エアコンの
とりはずですけど』&bsp;&bsp;新婚当時から
防犯対策に万全な貞彦さんが
つけた自動録音機能の
再生。&bsp;シンクにスポンジを落としゆっくり振り返える。&bsp;貞彦さんはの黒目は
私の逃げ道を完全に
ふさぎ、
こっちを見ていた。&bsp;&bsp;あと1日だったのに…なんで前日にこんな
ことが起こるの…せっかく、ここまできたのに…&bsp;&bsp;声をあげ泣き崩れたくなった。
正面にかかっている時計を
みると、貞彦さんの出社まで
あと4分。
私は、無駄に唾液ばかり
のみ込みながら、上ずった
かすれ声で最後の悪あがきをした。&bsp;&bsp;「……、ごめん。実はいわなくちゃ
って思っていたんだけど
貞彦さんに心配させちゃうと思って…
あの、、、ね、実は…
保育園のママ友が、ひどいDVに
あっていて、逃げることになった
んだけど……。」&bsp;「いいから早く要点だけをいいなさい!
まわりくどい!!」
貞彦さんがイラついてくる。
とにかく、あと4分をやり過ごせば
今だけでも
逃れられると思い、1文字でも
言葉を増やし1秒を稼ぐ。
「でもね、、、えっと
引っ越し業者にたのんでしまったら
ばれてしまうから、あのね、
かわりにうちで話し合いをして
必要な事は、うちへ連絡が
くるようになっていたというか、
えっと…その……。
でも、そんなこと貞彦さんが知ったら
怒るかなって思って。。。
隠し通したくて、さっきの電話も
きっちゃったの。
ほんとーに、ごめんなさい」&bsp;「余計な事にも
ほどがあります。
そんなことをして、
そのろくでもない旦那に
ばれて、私の会社になにかあったら
取り返しがつかないじゃないですか!」&bsp;「ほんとーに、ごめんなさい。
そんなことには、ならないように
していたんだけど…」&bsp;「上っ面だけの、何にもならない
付き合いをして、それのどこに
得があるんですか!!
今からその人へ電話しなさい」&bsp;&bsp;あと2分。
貞彦さんも時計をみていて、
テーブルに置いてある私の
携帯をわざわざ
手渡しに来る。&bsp;私はそれを後ろ手に
持ち、ばれないよう
電源ボタンをおして
オフにする。&bsp;&bsp;「えっ……できない……よ。
だって、電話しちゃって
旦那さんがそばにいたら…」&bsp;「いいから電話しなさい、
早くっ!」&bsp;「だって、そんないきなり。
もう引っ越しはきまっているんだし」&bsp;&bsp;せまってくる貞彦さんに
観念したふりをして、携帯をだしボタンをおす。&bsp;&bsp;「あれ!?つかない。
えっ?ええっ?なんで…
今ついていた…よね。。。」&bsp;「はやくしなさいっ!!」&bsp;「……おかしい、、よ。
なんでだろう。。。」&bsp;&bsp;わざとボケて、電源ボタンを
おさず、充電部分のフタをとり
充電器をとりはずしてチェック
しているそぶりをしたところで
2分がすぎた。&bsp;&bsp;「もういいです!!今夜、
その人に電話して
私にかわりなさい!!!
私が直接ことわります!」&bsp;「そんな…わかった。
ごめんなさい」&bsp;&bsp;貞彦さんは、怒り
スリッパをスコスコ
音をたてながら出勤
していった。
私は、腰が抜け
座り込む。
電源をオンにして
引っ越し業者に
電話した。
&bsp;※数年前に離婚裁判をして終わらせた記録です。現在は、幸せに暮らしています。
※貞彦さんに特定されないようフェイクをいれています。はっきり書けないところがあり申し訳ございません。&bsp;&bsp;&bsp;だいぶ前のことですが離婚裁判後、私の家族や協力してくれた人たちとは
あの日のことを
笑って話せるネタのような
ものになっていました。&bsp;誰も、このブログで最初から
書いていることを、すべて
知っているわけではなく、
前日にバレるという
出来事に
ネタすぎる、
ベタなドラマか、
と笑い合います。&bsp;笑い合える大切な
人たちですが、あの
引っ越しの日まで無事を
願ってくれ、一緒にカウントダウンを
しながら1日前、一緒に青ざめ
ました。&bsp;あの日のことだけは、この先も色あせず鮮やかな記憶として残り続けると思います。
今、私が離婚後からずっと味わっている
穏やかな日々だって
いつか、突然こわれてしまう
ことはあたりまえに
あって、それを思うと
もっと今が愛おしく、
大好きになります。&bsp;&bsp;ランキングに参加しています。クリックしていただけると嬉しいです。
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